ミッション推進

“未来のはたらく”を考えるワークショップ
~子どもたちのキャリア教育プログラムができるまで~

「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」をミッションに掲げるパーソルキャリアでは、社員一人ひとり、自律的に成長し続けるために不可欠な「キャリアオーナーシップ」を発揮できるよう応援している。

今回、話を聞くのは「“はたらく”を考えるワークショップ」 を立ち上げた竜田遼。「子どもたちに将来について考える機会を」と、2017年に始めた小中学校向け講師派遣プログラムは、年々成長を続け、2021年には経済産業省の「キャリア教育アワード」優秀賞を受賞、また2023年7月にはパーソルキャリアの社内表彰「MISSION VALUE Award」でGOLD賞を受賞した。

しかしその道のりは、順風満帆ではなかった。

"はたらく"を考えるワークショップに参加する小学生のみなさん

キャリア教育とは? ”好き”が仕事につながる可能性を伝える出張授業

「“はたらく”を考えるワークショップ」は、小中学校向けキャリア教育のための講師派遣授業プログラムだ。小学4年生から中学3年生が対象で、職業体験や業界研究など複数のワークショップを、全国の小中学校に無償で提供している。このワークショップで手を動かし、将来の「はたらく」や「生きる」を支える習慣や考える力を身につけてほしい。そんな思いが根底にある。

2017年の開始以来、これまでに延べ217回、13,689人(2022年11月時点)の子どもたちに出張授業を行っている。

大人になる前に「はたらく」を考える機会を

竜田遼
パーソルキャリア株式会社
ミッション共創推進部
キャリア教育推進グループ

プログラムを考案した竜田は、何をきっかけにキャリア教育が必要だと感じたのだろうか。竜田は前職から合わせて6年間、キャリアアドバイザーをしてきた。その中で、気になることがあったという。

竜田: 自分で自分の好きなことが分からなかったり、仕事の決め方が分からなかったり、そもそも“はたらく”ことに前向きではない方が、私が思っていた以上に多くいました。

そこで、子どものころから「はたらく」を考える機会が必要なのではないかと思いました。実際にどんな仕事があるのか知り、その楽しさややりがいを知っていれば、大人になっても仕事に前向きにはたらけるのではないかと。それが「“はたらく”を考えるワークショップ」を始めたきっかけです。
もちろん、そんなまじめな理由だけではなく、子どもが好きなので、年に1回ぐらいは子どもたちと思いっきり遊ぶ仕事があれば楽しいなという思いもありました(笑)

始めたころはほとんどボランティア

実際に動き始めたのは、社内公募のキャリア教育企画に採用されてからだった。しかもスタートしたころは、活動はほとんどボランティア。趣味扱いをされることも多かったという。

竜田: “好きなことをやれていていいね”という見方をされていた部分もあったと思います。

出張授業を受ける小中学生が実際に社会人になるのは10年以上も先であり、パーソルキャリアが提供する就職/転職支援につながるまでには時間がかかるので仕方がない面もあったと竜田は言う。

竜田: 無償プログラムなのでやればやるほど赤字です。本業のキャリアアドバイザーをこなしつつも、出張授業はほとんど自分一人で担当していたので、体力的にも時間的にもギリギリの状態。正直つらかったのは、業務としての売り上げ目標などを持っているわけではなかったので、どんなに頑張ってもプラスの評価にはつながらないことでした。

それでも続けられたのは、周りの人が意義を認めてくれたから。授業をした学校の先生が「自分が子どものころに知りたかった」と言ってくれたり、児童が「あっという間だった」と楽しんでくれたり、自分の出張授業が面白かったという手応えは、続けるモチベーションになりました。

それに、会社のミッション「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」と重なる活動です。部活動としても「キャリア教育ラボ」を作り、グループ各社から協力してくれる仲間を増やし、会社のプロジェクトになる日のために、粛々と実績を積み重ねました。

社長面談後に部署設立!? 突然、訪れた転機

そんな苦難の日々に、突然、転機が訪れる。「”はたらく”を考えるワークショップ」のウェブサイトを見た、当時の社長 峯尾太郎(現:パーソルホールディングス執行役員 CSO)から、この活動の詳細を知りたいと連絡があり、急遽面談することになったのだ。

竜田: この活動は無償ですが会社の存在意義につながりますし、プログラム内容も、先生方や子どもたちの「ぜひやってほしい/やりたい」をどう創り出すかを常に意識し、しっかり煮詰めています。内容からいって収益化は難しいプロジェクトですが、マネタイズプランも用意して臨みました。

しかし峯尾の言葉は意外なものだった。

「ビジネスを作りたいの? それとも子どもたちに機会を作りたいの?」

竜田の答えはもちろん後者。それを受けた峯尾は「無理して稼がなくてもいい」と、今の形のままで会社の業務として、専門の部署を設立することを決めた。

竜田: この活動の意味、そして価値を認めてもらえた瞬間でした。しかも部署になり、一つの業務になれば自分の評価にもつながります。活動初期に、評価されないことのモヤモヤがあり、「私の次にやる人のためにも、部署化したい」と思っていた私にはダブルでうれしい出来事でした。

さらに翌々日ぐらいにさっそく「部署の名前は何にする?」という話が来て、スピード感にも驚きました!

子どもたちだけではない「キャリア教育」がもたらす効果とは?

2021年6月に「ミッション共創推進統括部 キャリア教育推進グループ」という部署が発足。さらに2021年12月には経済産業省の「キャリア教育アワード」優秀賞を受賞。「『はたらく』に対して、ど真ん中でやっている」と評価される結果に。

竜田: 受賞したことで信頼感が大幅にアップしましたし、学校からの申し込みが増え、2022年度はすでに170件近い実施依頼を受けています。うち130件ほどは私が講師をしていますが、残りは兼務をしてくれているメンバーや、社員の中で自ら手をあげてくれた思いがある人に任せています。

部活として立ち上げた「キャリア教育ラボ」の部員も増え、現在はパーソルキャリアだけにとどまらず、パーソルグループ各社から180人以上が集まっており、全国での授業を一緒に運営している。この活動の何が、ここまで多くの社員を惹きつけるのだろうか。

竜田: メンバーに話を聞くと、活動を通して自分自身の内省が進むということ。キャリア教育に必要な仕事の現場を言語化し、講師として生徒や児童の前に立つと、その内容がすべて自分自身への問いとして返ってくるという意見が多いです。これは子どもたちのキャリアオーナーシップを育む活動で、実は大人側もキャリアやはたらくを見直すきっかけをもらい、「自分自身はどうありたいのか?」というキャリアオーナーシップの醸成につながっていると感じています。

「はたらくの価値観」を広げたい。夢は47都道府県で実施すること

"はたらく"を考えるワークショップの様子

最後に、今後について聞いた。

竜田: 今後やりたいこととしては、部署名に「共創」ともあるように、もっと多くの人を巻き込んでいきたいですね。そして「“はたらく”を考えるワークショップ」で、47都道府県全部に行くことです。それこそ離島などにある少人数の学校にも行きたいです。というのも、そういう場所にこそ「はたらくの価値観を広げること」が必要だからです。

私自身は長崎出身で自分が体験したことではありますが、はたらくことや仕事に対して固定の価値観が強い地域はあります。そして、子どもたちもその価値観を持つので、はたらくや仕事に対する視野が広がらないままの場合が多くあります。

社会には約1万7,000種類の職業があるといわれています。子どもたちがワークショップを通してたくさんの職種があることを知れば、将来の選択肢を広げられます。今好きなこともこれから好きになることも仕事にできる可能性があることを知ってほしい。価値観を広げ、考え方を広げることで、将来「はたらく」ことをポジティブに考えてほしい。

そして10年後に大人になったとき、私たちの会社に関わってくれたり、入社してくれたりしても面白いなと、思い描いています。

竜田のキャリア教育への思いと活動は、子どもたちのこれからのキャリアオーナーシップと、「はたらく」を支える大きな夢につながっていくだろう。

※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

編集:パーソルキャリア広報部 ライター:明知 真理子

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