多様性の尊重

子育て経験のない男性管理職が、育児&時短勤務にチャレンジ
「17時退社」「オンライン育児」体験から得た気づきや学びとは?
【前編:チャレンジ管理職編】

パーソルキャリアでは、「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指しています。これは、はたらくすべての人が、自らの可能性を信じ、選択・行動する。つまり、自分の人生やキャリアのハンドルを自分で握る人を増やしたいということを意味しています。これを実現する上で、社員にも「キャリアオーナーシップ」を持ち、個々の考える幸せを実現してほしい。そういった強い想いのもと、2021年10月からパーソルキャリアで推奨しているのが、男性社員の1カ月以上の育休取得です。

とはいえ、「育休を取ったら周りからどう思われるだろう」「休みの間、仕事は大丈夫だろうか」といった不安を持つ男性社員は多いはず。そこで当社では、2022年1月末から2週間、「男性育休推進 ワーパパ体験プロジェクト」を実施。体験を通じて、男性が育休を取ることの大切さや、制限のある働き方をしている人の実態を知り、本質的な働き方改革に繋げてもらうことが狙いです。このプロジェクトに参加した、子育て経験のない3人の男性管理職(チャレンジ管理職)に、人事本部長がインタビューしました。

プロジェクト概要

実施期間:2022年1月31日(月)~2月14日(月)17:00~20:00
対象:子育て経験のない男性チャレンジ管理職3人、子どものいるパパ管理職3人

プロジェクト全体像
管理職育児体験プロジェクト
プロジェクト内容
オンラインワンオペ育児体験 【育児中家庭のリアルを知る、体験する】
パパ管理職と、育児経験のないチャレンジ管理職がペアで実施。パパ管理職は自身の家庭で、平日夜の家事・育児をワンオペで体験。チャレンジ管理職は、オンラインでパパ管理職家庭の様子を見守りながら、絵本を読む、宿題を見るといったオンラインでも可能な子どものお世話をすることで、パパ管理職をサポートしながら育児を体験する。
ワーパパ・ワーママ社員実態ヒアリング 【育児中社員のリアルを知る】
パパ、チャレンジ管理職が、育休取得経験を持つパパ社員、育児時短で働くママ社員、管理職ママ社員に、働きながらの家事・育児のリアルをヒアリングする。
17時退社 【時間制約のある働き方を知る、体験する】
平日2週間、17時までに仕事を終える。時間制約のあるはたらき方を体験し、「時間に対する焦りやいら立ち」「やりたいのにできないジレンマや中途半端感」などを体感。組織全体での働き方改善や仕事の仕組み化の必要性を理解し、今後の自身のはたらき方やマネジメントを見直す機会につなげる。
体験管理職、インタビュアー紹介
チャレンジ管理職3名とインタビュアー

育児体験でパパ・ママ社員への理解不足を痛感。仕事の捉え方に与えた影響とは

チャレンジ管理職として本プロジェクトに参加した河崎達哉さん、鈴木智勝さん、大里真一朗さんの心境に、どんな変化があったのか。人事本部長の喜多恭子さんが聞きました。

喜多: プロジェクトに参加し、実際に育児を体験してみてどうでしたか?

鈴木: 正直、最初は業務の一環として考えていました。しかし、やってみると、仕事の捉え方が変わりましたし、体験できたことで、家庭を持つパパさん、ママさんについて、たくさんの学びがありました。

大里: 育児ってこんなにも大変なのか、と知ることができたのはいい機会でした。今まで育休を取得している男性、女性の感情を、理解できているようでできていなかったなと思います。子どもと接するのは本当に大変でしたが、今はもう会えなくてさみしいなと感じている自分がいます(笑)。

河崎: 時短ではたらく方々とはこれまでも日々会話をしてきましたが、今思えば十分に共感できていなかったと気がつきました。相手もそれを感じていただろうなと、すごく反省しました。今回の体験を通じて、これを自己認知ができたことで、半歩前進したのではないかと思います。

喜多: 体験の中で最も大変なのはどんなことでしたか?

鈴木: 17時までにすべての業務やミーティングを収めるのは、とても難しかったですね。

喜多: それはどうやって解決したんですか?

鈴木: 周囲にプロジェクトに参加することを伝えて、協力してもらったのが一つ。もう一つは、仕事の効率化ですね。実際、これまでの仕事の仕方を見直してみると効率化できることがたくさんあって、それは学びでしたね。河崎さんも時間の使い方はかなり工夫されたと聞きました。

河崎: 効率的に時間を使うための工夫として、隙間タスクリストを作るようになったのはぼくの中では変化でした。例えば会議と会議の間の5分間って、今までは何げなく過ごしていましたが、実はその隙間の時間に、細分化すればできるタスクがたくさんありました。今まではそこに感度がなかったので、体験したことで気づくことができました。

大里: ぼくが一番感じたのは、何げなく17時以降に組まれているミーティングに参加できない気まずさですね。あとは、2歳半の子との意思疎通がすごく難しかったですね。何とか理解しようとまじめに向き合って……。すごく大変でしたが、この経験は仕事のマネジメントでも活きる、コミュニケーションが磨かれたなと思いました。

育児中のメンバーとのコミュニケーションの取り方に変化が

喜多: プロジェクトの開催時期は1月末。年度末に差し掛かる繁忙期と重なってしまいました。そのタイミングで参加を打診された時の率直な気持ちを教えてください。

河崎: 「ぼくじゃないほうがいいんじゃないかな」と(笑)。実際にメンバーからも、「河崎さんがこのプロジェクトに参加しているイメージが全然ないです」と言われました。でも、それを聞いて、むしろ参加したほうがいいと自分なりに意義を見いだすことができたと思います。

大里: ぼくもはじめはびっくりしました。3回くらい資料を読んでも、自分にとって何のためのプロジェクトなのかまったく分からなかった(笑)。ただ、ぼくの場合は近々子どもが生まれる予定があったので、予行演習だと思って前向きに頑張ろうと思いました。

鈴木: 河崎さん以上に、ぼくが一番「適任ではないだろう」と思いましたよ。河崎さんも大里さんも結婚していて、大里さんは子どもが生まれる予定がある。でもぼくは、バツイチ子なしですからね(笑)。

喜多: 実際、育休を取得しているメンバーもいると思いますが、体験してみて育休や子育てへの考え方はどのように変わりましたか?

河崎: ぼくはまだ完全に変わりきれているとは思っていませんが、会話に少し変化が生まれた感覚はあります。これまでは、「子どもがいる」という事実しか知らなかったのが、今はお子さんの人数や年齢、家庭での家事や育児の分担なども聞いています。それに対して今の業務状況が適しているのか、ストレスを感じていないかまでを把握するようになりました。

大里: ぼくも同じで、今までは「時短の方」というくくりでしか把握できていなかったと思います。例えば、時短中、たまに残業があったとしても、やりがいを持ってはたらいていれば必ずしもそれが負担ではない場合もあります。むしろ、そうしてでも仕事をしたい場合もあるかもしれません。このご時世、一歩踏み込んでプライベートなことを聞くのは勇気がいることですし、全員がそれを望んでいるわけではないことも理解しています。その上で、適したサポートを行うために、場合によっては意識して踏み込んだコミュニケーションもしてみようと思っています。

鈴木: ぼくも子育てという大枠でまとめてしまっていた部分がありました。実際に育児を体験して、子どもの個性や特徴はそれぞれで、困っていることも十人十色だと気づきました。子育てはルーティンどおりにはいきません。独身や子どものいない人は、家に帰ってリラックスできると思いますが、育児は帰宅してからも気を張っていなければなりません。「仕事と子育ての両立」と言うのは簡単ですが、実際にやるのは本当に難しいことだと再認識しました。

育休取得による「評価」や「今後のキャリアへの影響」といった 不安が解消できる仕組みや制度を整えるべき

喜多: プログラムの中で男性育休体験、管理職ママ社員の方へのヒアリングを実施しました。それぞれ印象的なエピソードとプロジェクトを通じて得た気づき、行動の変化について教えてください。

大里: 時短の方と、その上司・部下という当事者間だけでは対応にも限界があります。チームという単位だけでなく、部や組織という単位でサポートする仕組みを作っていく必要もあると感じました。自分の担当している組織では、4月以降、常設会議は17時以降には組まないという運用に変えました。少しでも、子育て中の社員の方々にとってはたらきやすい環境を整えていければと思っています。

鈴木: 子育てを経験した男性2人に話を聞いたときに、「今だけ」「今やりたいこと」という短期的な視点から、もう少し中長期的な視点で、何に取り組むべきかを考えるようになった、とおっしゃっていたんですね。子育てとは、ある種のトランジションであり、自分の価値観や考え方が大きく変わる出来事なんだということがとても印象的でした。
あとは、「子育てをしているからあの人には仕事を振れない」みたいに、気を使われすぎるのもストレスだという話も印象に残りました。

河崎: ぼくが話を聞いた時短ママ社員は、「もっとキャリアのことを真剣に聞いてほしい」と言っていました。長い人生のなかで、子育て中の期間もあれば、そうでないときもある。また、同じ子育てでも1歳と5歳では状況が違う。点ではなく線としてつながっていく人生の中で、どんなゴールを目指しているのか、何を価値観として大切にしているのか、そこをもっときちんと理解できる環境を作ることができるとよいのではないかと思いました。価値観が多様化する中で、画一的な施策を全員にあてはめるのは限界があります。どんなキャリアを歩み、どんな人生を送りたいのか、一人ひとりとしっかりと対話していくことが重要だと実感しました。

喜多: わたしは人事本部長として社員と接する中で、子どもを授かった女性が、全員すごくハッピーに子育てに向き合えているかというと、そうではないということを知りました。それは、これまで積み上げてきたキャリアを断念しないといけないのでは、という不安があるから。男性社員も評価や今後のキャリアアップなど、同じような不安を感じているはず。これはどう変えていけばいいのでしょうか。

鈴木: ぼくがインタビューで感じたのは、昇進を断念するというよりは、リセットする、3歩下がるような感覚を抱いているのかな、ということです。例えば、ちょうどマネジャーに昇進するタイミングで育休を取得すると、直近の評価に影響するのではないか、と思って取得できない。子どもが生まれてくるタイミングは選べないので、そういった不安を何かしらの制度でカバーできるといいなと思いました。

河崎: 今、ぼくが所属している組織でいうと、実際に時短勤務中のメンバーでマネジャークラスに昇格した方や表彰を受けるような方が増えています。もちろん、昇進だけがキャリアアップではないと思いますが、時短でパフォーマンスを上げてはたらき、評価されているという事例があるとイメージしやすいのではないかと感じます。

大里: 実際、特に20~30代の若手にとってはキャリアが止まる、分断されるという不安はすごく大きいと思います。育休を取得してもマネジャーに昇進できるという、安心できる仕組みは必要ですし、メンバーの不安を理解するための管理職に対する研修もみんなで受けたらいいのではと思います。

喜多: 最後に、今回のプロジェクトのような取り組みについて、率直な感想を聞かせてください。

大里: 家庭を持っているかいないかにかかわらず、こういった体験をすることで理解を深め、すり合わせながら業務を定義していくことは重要だと感じます。個人的には人間としての深みや知見も深まると思うので、さまざまな角度からメリットがある取り組みだと感じました。

河崎: まったく同感で、管理職に限らず、できる限り多くの人が体験するべきだと思います。この体験をしたからといって100%理解できるようになるわけではありませんが、「理解できていなかった」という自己認知が進むだけでも大きな一歩だと思います。

鈴木: 子どもに興味がない、作るつもりがない人であっても、17時までに仕事を終わらせるための工夫という一点を取っても気づきがあると思います。ぼく自身、忙しい中でもできる工夫があると知ることができたので、育休や子育てという文脈でなくとも、この取り組みには学ぶ価値がたくさんあると感じました。

喜多: 3人とも、ありがとうございました。仕事と子育ての両立を完璧にこなすことは非常に難しいと感じます。その中でも、会社の中ではキャリアを積み、家庭では子どもとの時間を作る。それが実現できる組織を作っていく必要があると感じています。人事部では、そういった支援に全力で取り組んでいきたいと思います。

※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

【後編:パパ管理職編】に続きます。

 

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